我等の生涯の最良の年 1946年
第二次世界大戦後の作品
この時期のアカデミー賞受賞作品をおっていると
時代背景として「戦争」がからんできます
この作品は真正面から「ひとと戦争」を描いたものですね
アメリカは本土での戦争を経験しませんでしたから
戦争に行った人と
戦争に行かなかったひととの
温度差
戦争に対する考え方の差
肉体的、精神的な傷をおって帰った兵士たちへの対応の差
個人的にも社会的にも「差」の激しい時期だったのだと思います
描かれる日本(日本刀、寄せ書きのある日の丸!? 学校の物理で学んだ原爆への意見)など
さりげないけれど両面からの視点があって深いと感じました
助演男優賞、特別賞受賞のハロルド・ラッセル
演技ではなく本当に戦時中に両手を失った人、ハロルド・ラッセルが
まったく演技経験もないのに重要な帰還兵3人のうちの一人に採用されました
すばらしいです
しあわせになってほしい!
監督賞、ウィリアム・ワイラー
やはり同じ監督がアカデミー監督賞を受賞した1942年の「ミニヴァー夫人」は
ある意味、戦争のプロパガンダ作品でした
その後、ウィリアム・ワイラーはアメリカ人として第二次世界大戦に参加
でも出生はドイツというひとでした
その後、家族と離れて一人アメリカにわたりアメリカ人となるも
ユダヤ系のドイツ人であるため家族はドイツ軍に連れ去られていた
という
何重にも複雑な過酷な経験をされていて
この「我等の生涯の最良の年」という映画にずっと寄り添う「あたたかさ」が
どこから来るのかが分かるような気がしました
「アメリカ」対「敵国」だけでも
「賛戦」対「反戦」だけでもない
もっと「戦争の本質」を家族という普通の毎日をともにする「場所」で描いた作品ですよね
長い映画ですが
一貫して「愛」のある「こころ」のある映画でした
のちのユダヤ人の「ベン・ハー」にもつながる、
ひとつではない視点をもった監督ですね
主演男優賞、フレドリック・マーチ
「ジキルとハイド氏」でも主演男優賞をとったひとです
全く違う役!
軍隊での「階級の上下」がすべての世界からアメリカに帰還すると
エリート銀行員としての豊かな何ごともなかったかのような生活が待っていた
表面上は愛する家族と、以前よりさらに昇進する仕事
恵まれすぎているほどに恵まれているのに
お酒に走るしかないほどの違和感
他の2人と比較したら「贅沢をいうな」と言われそうな立場であったとしても
「こころ」というものは人と比較しても始まらないもので
その人その人に「苦しさ」というのはありますよね
「ミニヴァー夫人」の助演女優賞のひと、テレサ・ライト
「ミニヴァー夫人」では上流階級の孫娘役でした
今回の「我等の生涯の最良の年」では豊かなあたたかな家庭の娘役
この女優さんもいいですね
私は全く知らなかった俳優さんですが、母が生きているうちに話してみたかったなあと思いました
ありがとうございます
とても複雑な生い立ちの監督であっても
第二次大戦に兵士として行く前と行った後とでは
戦争に関する「映画」の撮り方も変わったという話でした
「経験」っておおきいですよね
だからこそ
今もお元気に生きていらっしゃる戦争体験をされたお年寄りの方々に
もっと語ってほしいと思います
戦争は頭でするような簡単なものではなく
自分自身が「誰かを殺し、誰かに殺される」ものなのだから
その「戦争」というものを「経験」を、語ってほしいと思います
アカデミー賞の作品賞を受賞した作品のなかでも
上記の作品のほかにも「第二次世界大戦」を時代背景とする映画がありました
戦争って何なのか
自分が兵士として戦地に行くというのはどういうことなのか
今、たまたま日本は平和な毎日だからこそ
普通の心で自分に問いかけてみることができるのかもしれませんね
招集がある「若い人」たちにこそ「戦争とは」を複数の視点で描いた作品を見てほしいと思いました
この映画は、あたたかいです
今日もいい一日をおすごしくださいね